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『せいめいのれきし』(バージニア・リー・バートン) レビュー
 気のとおくなる話


2014年9月
文・石鍋健太



■ 子どもの「なぜ」にどう答えるか

うちの娘の話ですが、「人間はむかしサルだった」ということについて異様に興味を抱いた時期がありました。テレビで見たか誰かに聞いたかしたのでしょう。

何度も「なぜ」「どうして」「なんなの」と迫られ、なんとかうまい説明をと思いがんばったものの、娘は首を傾げるばかり。「おとうちゃんも子どもの 時はおさるだったの?」と顔をしかめられたり、テレビに映るサルを指さして「あのおさるは、つぎは誰になるの?」と真顔で聞かれたりするに至り、諦めまし た。

「ごめん、実はおとうちゃんもよくわかってなかった。こんどおさるが人間になるお話の本を買ってくるから、一緒に読もう」と、その場を逃れたのでし た。だいたい生物の進化のことなんて、大人だって“まあなんとなくそういうことなんだろう”と信じているだけで、本当にすべてを理解しようとしたら、膨大 な時間と労力とお金を研究に注ぎこまなければならないはず。そんなことをしていたらその間に娘は大人になってしまう。だから子どもの「なぜ」に答えるのは 絶対不可能。うまい説明も厳密な答えも要らないのだ、と開き直って本を開くのがいちばんではないかと。

 

■ なかなか「おさる」が出てこない

そこで用意したのは、バージニア・リー・バートンの『せいめいのれきし』という本でした。


タイトルどおり生命の歴史が全五幕のお芝居に仕立てられていて、見開き一頁を一場として進化の過程を紹介しています。一場ごとに描かれた挿絵の落ち 着いた色合いがとても素敵で、いしいももこさんの訳文もわかりやすいので、小さな子どもでも集中してくれるかな、と思いこの本を選んだのでした。

「おさるが人間になる本、買ってきたよ」と本を渡すと、娘は大喜び。鮮やかな黄色い表紙に、様々ないきものたちの赤や緑のシルエットがひしめき合っている楽しげな表紙も、彼女の心をぐっと掴んだようでした。


ところが。お話は「考えられないほど大昔」から始まります。プロローグの第一場の舞台は、暗黒の宇宙です。


「うちゅうってなに?」「最初はなにもなかったんだよ、真暗で」「なんで?」と、まだ地球もできていないのに問答が始まってしまいました。ちょっとまだ難 しかったか、と思いつつも、問答を繰り返しながら読み進んでいくのですが、なかなか娘が見たがっている「おさる」が出てこない。


20頁目くらいで、ようやく三葉虫みたいなやつが登場。


30頁目くらい、恐竜のくだりでちょっと盛り上がりましたが、彼らの絶滅後、小さな哺乳類がちょろちょろし始めたあたりで、気づくと娘の心はもう離れてしまっていたのでした。

 

■ ふしぎでわからない子どもたち

本を開いて子どもといっしょに考える、というと聴こえはいいけれど、やってみると難しいものです。この本のほかに、『エボリューション』という分厚 い図鑑もいっしょに読んだのですが、やはり魚がたくさん描いてある海の絵や、恐竜たちが闘っている絵などを喜ぶのがせいぜいで、結局、進化について考える ところまでは辿り着けずじまいでした。

とにかく、それはそれは気のとおくなる話なのだということはどうやら伝わったようです。目的とはすこしずれてしまったものの、この二冊の本を、娘は 単にたくさんの動物や魚や植物が登場する本として、その後も楽しく読んでいました。ところがそうかと思うと、教えてからだいぶ経っているのにとつぜん「化 石」の話題を持ち出してきたりもして、子どもというのはなんとも侮れないものです。がんばります、がんばりましょう。




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